ご挨拶

日本腎臓リハビリテーション学会の理事長に指名を頂きました柴垣有吾と申します。上月初代理事長、山縣前理事長の大きなリーダーシップの下、関係各位が築かれてきた本学会の発展をさらに持続させるよう、大変に微力ではありますが精一杯尽力する所存です。

近年、腎臓リハビリテーションの重要性はますます高まっております。慢性腎臓病(CKD)患者の増加に伴い、単なる腎機能の管理にとどまらず、言葉通りの健康寿命を延伸させるために包括的なアプローチが求められています。リハビリテーションとは本来、患者が元の生活に復帰し、それぞれの役割が果たせるようにすることが目標です。よって、本学会は運動療法のみならず、栄養管理、心理社会的支援など多方面からの取り組みを推進し、患者の皆様が幸せで生きがいに満ちた生活を送れるWell-beingを達成できるよう支援していくことが必要です。その目標を達成するために3つの大きな方針を掲げたいと思います。

① 文字通り“多”職種が参加し、そしてコミットするアカデミアとしての学会の推進

現在、本学会の会員の多くを医師と理学療法士が占めています。しかし、上記のリハの目的を達成するためには、看護師(臨床工学技士)、管理栄養士、言語聴覚士/作業療法士、薬剤師、認定/臨床心理士、ソーシャル・ワーカーなど生活に関わる多方面からの支援を行う専門家集団がそれぞれの得意領域で活躍し、協力することが必要となります。看護師や管理栄養士の数を増やすことが当面の目標ですが、その他の職種も同様に大切かつ欠かすことの出来ないピースです。委員会や学会でのセッションで、これら職種が活躍・参加したいと思える場を作っていきます。

② 学術の更なる推進

アカデミアである以上、研究活動やエビデンス構築などの学術の推進は学会の存在意義でもあります。これまで関係各位が築いてこられた学術をさらに発展させることが重要です。特に、現在進行中であるコホート研究には学会の総力を注ぎ、ガイドラインが依拠するに資する日本発のエビデンス構築が目標となります。これには、運動療法の視点のみならず、栄養の観点(オーラル・フレイル含む)、生活再建・社会/家庭復帰の観点などからの新たなクリニカル・クエスチョンおよびアウトカム(医学的アウトカムのみならず、患者報告アウトカムや社会的アウトカム)も検討することが大切です。最後に診療報酬加算の継続や新規獲得に資する医療経済的な研究も重要であり、推進します。

③他学会との連携

日本には日本腎臓学会、日本腎臓病協会、日本透析医学会、日本腹膜透析学会、日本臨床腎移植学会など、腎疾患患者のケアに関与する多くの学会があります。それぞれの学会の素晴らしい取り組みが断片化することなく、お互いの強みを重ね合わせることが患者に一番寄与するものになることは間違いありません。当学会はこれらの学会との協力・連携(学術的連携、患者団体・行政へのアプローチなど)を深めていきたいと考えています。

本学会の活動を通じて、患者の皆様、ご家族、そして医療従事者の皆様にとって有益な情報と支援を提供できるよう努めてまいりますので、引き続きご支援、ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。

 

2025年4月吉日

一般社団法人日本腎臓リハビリテーション学会 理事長

柴垣 有吾