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サルコペニア・フレイルとリハビリテーション医療

著者名
吉村 芳弘
所属
熊本リハビリテーション病院サルコペニア・低栄養研究センター
キーワード
サルコペニア,AWGS2019,SARC-F,フレイル
詳細

要旨

サルコペニアは,転倒・骨折,身体機能低下,嚥下障害,認知機能低下,死亡などの健康障害のリスクが高まった進行性かつ全身性の骨格筋疾患である。サルコペニアと低栄養は身体的フレイルの中核要因である。サルコペニアは,骨格筋量の減少,筋力の低下,身体機能の低下を組み合わせて診断する。回復期リハビリテーションを行う患者ではサルコペニアの有病率が約50%と高く,日常生活動作や嚥下障害,自宅退院などのリハビリテーションのアウトカムと負の関連 がある。予防や治療は運動,栄養,口腔,生活,薬剤など包括的なアプローチが必要であり,多職種でのリハビリテーションが極めて有用である。最近では呼吸サルコペニアの概念や診断基準が新しく提言されている。

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高齢CKD 患者における栄養―サルコペニアへの対応も含め―

著者名
細島 康宏・蒲澤 秀門
所属
新潟大学大学院医歯学総合研究科腎研究センター 病態栄養学講座
キーワード
食事療法,サルコペニア,フレイル,食事性酸負荷
詳細

要旨

わが国においては高齢者の増加に伴い,低栄養にも関連してサルコペニア・フレイルが大き な社会的問題となってきているが,CKD においてはCKD そのものによる二次性の要素もあり, 状況はさらに悪いことが指摘されている。サルコペニア・フレイルには運動療法と食事療法の併 用が有用とされているが,CKD の食事療法における「制限」とは相容れない側面がある。日本 腎臓学会では「CKD 診療ガイドライン2018」において,CKD の進行を抑制するためにたんぱ く質制限を推奨している。また,高齢CKD 患者を念頭にした「サルコペニア・フレイルを合併 した保存期CKD の食事療法の提言」も報告され,そのアウトカムのリスクなどを総合的に評価 し,症例によっては運動療法とともにたんぱく質制限を緩和してもよいことが示されている。一 方で,サルコペニア・フレイルの「予防」を考慮したCKD の食事療法については未だに不明な 点が多く,今後における,より詳細な検討と議論が求められている。

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サルコペニアの予防における運動療法の現状

著者名
三浦 美佐
所属
筑波技術大学保健科学部理学療法学専攻
キーワード
サルコペニア,予防,運動療法の現状
詳細

要旨

サルコペニアは,筋力と機能の低下を伴う骨格筋量の減少と定義される障害1)であり,サルコ ペニアは慢性腎臓病(CKD)患者に好発する合併症である1).2010 年の欧州のサルコペニア研 究班の定義を受け,日本サルコペニア・フレイル学会による定義においても「サルコペニアは高 齢期に見られる骨格筋量の減少と筋力もしくは身体機能(歩行速度)などの低下により定義され る」2)とある。さらに血液透析療法は,患者の転倒や骨折,運動障害,依存症,生活の質の低下, および死亡の重要な予測因子である3 , 4)。一方,サルコペニア診療ガイドラインによると,運動 療法はサルコペニア発症の予防・抑制に対して推奨され,治療法として推奨される。さらに,サ ルコペニアに対する介入の基本は,運動と栄養の組み合わせであるとしている。それゆえ,サル コペニアの発生予防に運動療法は,栄養療法とともに中核をなす。本稿ではサルコペニアの予防 における運動療法の現状について言及する。

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心腎連関とサルコペニア ―Cardio-Renal Sarcopenia Syndrome―

著者名
塩路 慎吾・萬代新太郎
所属
東京医科歯科大学腎臓内科
キーワード
サルコペニア,慢性腎臓病,心不全,心腎連関,Cardio-Renal Sarcopenia Syndrome
詳細

要旨

運動器,内分泌器官として機能する骨格筋の量・質の低下症サルコペニアは,生命予後,健康 寿命を規定する重要な疾患である。2010 年に策定されたEuropean Working Group on Sarcopenia in Older People(EWGSOP)による診断基準は,2018 年の改訂時に(EWGSOP 2),加齢によ る一次性サルコペニアと,慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)や慢性心不全(chronic heart failure:CHF)など疾患による二次性サルコペニアを分類することが,その重要性ととも に明記された。CKD とCHF は多因子によって直接的,または併存症,栄養不良,薬剤などを介 して間接的に骨格筋量と質を低下させる。本稿では,各々によるサルコペニアの分子メカニズムと 共通点について概説する。また,最近CKD とCHF が相互に影響する心腎症候群(cardio-renal syndrome:CRS)が,サルコペニアの病態を相乗的に悪化させるという説も浮上しており,“Cardio- Renal Sarcopenia Syndrome” が潜在する可能性も議論する。

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糖尿病性腎臓病患者の病態における サルコペニアリスク

著者名
荒木 信一
所属
和歌山県立医科大学腎臓内科学講座
キーワード
運動療法・指導,サルコペニア, 身体活動量,適応・禁忌,リスク管理
詳細

要旨

わが国の高齢化と医療の進歩により,サルコペニアなどの老年症候群を合併する高齢者が増加 している。特に,糖尿病あるいは慢性腎臓病患者のサルコペニア合併頻度は,一般住民よりも高 頻度であることが多くの疫学研究により示されている。一般に,加齢に伴う身体的な機能変化が サルコペニアのリスクとなることはよく知られているが,糖尿病あるいは慢性腎臓病患者では, 加齢以外にも,高血糖,インスリン抵抗性,慢性炎症,アシドーシス,ビタミンD 不足などさ まざまな病態がサルコペニアの発症・悪化に関与することが報告されている。そのため,糖尿病 性腎臓病を合併する高齢患者は,極めてサルコペニアリスクの高い病態であり,高齢糖尿病性腎 臓病患者の生命予後あるいは生活の質の改善のためには,その病態とサルコペニアリスクの関係 を理解することが重要となる。そこで本稿では,高齢糖尿病性腎臓病のサルコペニアリスク・病 態について概説したい。

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骨粗鬆症とサルコペニア

著者名
奥野 仙二
所属
仁真会白鷺病院
キーワード
サルコぺニア,骨粗鬆症,オステオサルコペニア,マイオカイン,オステオカイン
詳細

要旨

高齢者において高頻度にみられる,骨粗鬆症とサルコペニアは合併していることも多く,オス テオサルコペニアと呼ばれている。このオステオサルコペニアは,運動機能の低下,転倒や骨折 のリスク因子となり,さらに生命予後とも関連している。骨粗鬆症とサルコペニアが合併しやす い機序としては,遺伝的要因や生活習慣に加え,骨と筋肉の両方に影響をおよぼす慢性炎症やイ ンスリン/ インスリン様成長因子- 1 などの関与が考えられる。また,筋肉からはマイオカイン と呼ばれる生理活性物質が産生されているが,筋肉に対して抑制的に作用しているマイオカイン であるマイオスタチンは骨形成を抑制し骨吸収を促進する。イリシンやβ-aminoisobutyric acid といったマイオカインも骨に対して作用を有している。反対に,骨から産生されるオステオカイ ンであるオステオカルシンやスクレロスチンなどは,筋肉に対しても作用を有している。このよ うに,骨と筋肉はさまざまな要因により強く関連し合っている可能性が考えられている。

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感染症とサルコペニア

著者名
安藤 亮一
所属
石川記念会
キーワード
感染症,サルコペニア,筋肉,栄養,慢性腎臓病
詳細

要旨

サルコペニアは外科術後感染症,急性期病院入院後の院内感染,高齢者の市中肺炎,敗血症の 予後悪化,HIV 感染,結核,COVID- 19 の重症化などに関連することが臨床的に認められてい る。また,慢性腎臓病でも感染症の発症や予後との関連が示唆される。サルコペニアは,免疫能 低下,栄養状態不良,活動性低下,代謝ストレス,嚥下機能の低下などを介してこれらの感染症 のリスクとなる。サルコペニアにおける免疫能低下には,筋肉から分泌されるマイオカインなど をはじめ免疫システムに関与していることが要因である。一方,感染症は,蛋白異化が亢進し, サルコペニアをきたす。
一般に,サルコペニアの治療法は栄養介入と運動療法である。術後感染症に関しては,周術期 栄養・リハビリテーション介入が有効である可能性がある。栄養介入としては,十分なたんぱく 質とエネルギーを確保することが勧められる。⾼侵襲が加わった重症患者に対する早期リハビリ テーションや早期経腸栄養も有用である。

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サルコペニア防止に期待される 薬物療法の役割

著者名
田中 哲洋
所属
東北大学大学院医学系研究科腎・膠原病・内分泌内科学
キーワード
レニン・アンジオテンシン系阻害薬,尿毒症物質,腎性貧血,HIF-PH 阻害薬,SGLT2 阻害薬
詳細

要旨

サルコペニアは高齢期にみられる骨格筋量と筋力の低下であり,その有病率はCKD 患者,と りわけ透析患者で高い。活動性や食事摂取の低下,負のタンパクバランス,代謝性アシドーシ ス,慢性炎症状態などの多くの要因が関与し,全原因死亡や心血管死,各種循環器疾患のリスク と相関する。その発症予防・治療にはレジスタンス運動や有酸素運動などの包括的運動療法の 他,栄養療法を組み合わせた複合介入が重要である。一方で新規薬物療法への期待も高まりつつ あり,現行のCKD 治療の一部であるRAS 阻害薬の使用や腸管由来尿毒症物質の抑制,貧血・ 低酸素の改善などによってサルコペニアの改善がもたらされることを示唆するいくつかの基礎研 究や観察研究が存在する。さらには近年腎保護効果が相次いで報告されているSGLT 2 阻害薬に ついてもサルコペニアリスクを評価する臨床試験が進行中である。

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教育講座1 腎臓病研究のエンドポイント

著者名
星野 純一
所属
東京女子医科大学内科学講座腎臓内科学分野
キーワード
Clinical endpoint,Nephrology,Surrogate endpoint,Clinical study
詳細

要旨

腎臓領域における古典的なエンドポイントとしては透析導入(腎死)や血清クレアチニン2 倍 化がある。しかし,多くの腎疾患は長期間にわたり緩徐に腎機能が低下するため,質の高い臨 床研究を行っていくためには,死亡や腎死を事前に予測する適切なサロゲートアウトカムの開 発が急務であった。そのため2014 年にサロゲートアウトカムに関する国際会議が開かれ,2〜 3 年間のeGFR 30%低下を中心にいくつかのサロゲートアウトカムが提案されてきた。現在も eGFR 30%低下や年間eGFR 低下>5 mL/min/ 1 . 73 m2 などは多くの腎疾患研究において重要な サロゲートアウトカムとして広く用いられている。今回は腎臓病研究におけるこれらのエンドポ イントの広がりと使用上の注意点について概説する。

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教育講座2 足病を合併した糖尿病性腎症患者の リハビリテーション

著者名
河辺 信秀
所属
東都大学幕張ヒューマンケア学部理学療法学科
キーワード
糖尿病神経障害,糖尿病足病変,下肢動脈疾患,フレイル,免荷
詳細

要旨

糖尿病性腎症患者は,下肢動脈疾患のリスクが高く足病を合併する可能性が非常に高い。糖尿 病神経障害も高率で合併しているため,力学的負荷による足病リスクも高い。このため,糖尿病 腎症患者においては,創傷の治癒や予防を目的としたリハビリテーションが必要となる患者が多 い。2022 年に発行された日本フットケア・足病医学会の「重症化予防のための足病診療ガイド ライン」においても,「透析患者」「歩行」それぞれが1 つの章として取りあげられており,足病 治療において重要な要素であることが示されている。さらに,足病の治癒過程での廃用症候群に 加えて,糖尿病性腎症患者ではフレイルが高頻度で発生する。したがって,足病を合併する糖尿 病性腎症患者は,免荷や活動量の制限が必要な足病への介入に加えて,荷重や活動量の増加を行 う身体機能低下への介入を両立させる必要がある。本稿では,これらの矛盾した状況を解決する ための具体的な方略について解説した。

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投稿論文

原著 腎臓リハビリテーションの実践に必須な知識・技能のミニマムスタンダード:
修正Delphi 法による合意形成

著者名
忽那 俊樹*1・小坂 志保*2・渡部 祥輝*1・安藤 康宏*3・大山 恵子*4・河野 健一*5・瀬戸 由美*6・髙田 亜紀*7・飛田 伊都子*8・松永 篤彦*9
所属
*1 東京工科大学医療保健学部リハビリテーション学科理学療法学専攻
*2 東邦大学看護学部看護学科基礎看護学研究室
*3 国際医療福祉大学病院予防医学センター・腎臓内科
*4 医療法人社団つばさつばさクリニック
*5 国際医療福祉大学成田保健医療学部理学療法学科
*6 医療法人薬師会まるき内科クリニック
*7 医療法人光心会諏訪の杜病院看護部
*8 大阪医科薬科大学看護学部看護学科
*9 北里大学医療衛生学部リハビリテーション学科
キーワード
腎臓リハビリテーション,ミニマムスタンダード,Delphi 法,多職種チーム,教育
詳細

要旨

研究背景:慢性腎臓病患者に対する腎臓リハビリテーションが注目されているものの,医療者 への教育内容は標準化されていない。 目的:腎臓リハビリテーションを実践するうえで必須な知識・技能のミニマムスタンダードを 明らかにすること。 方法:腎臓リハビリテーション指導士の有資格者を対象とした。インターネットを使用して 3 回のアンケート調査を実施し,修正Delphi 法を用いて合意形成を図った。腎臓リハビリテー ションに関する調査項目において,回答者の70%以上が「必須である」と回答した項目をミニ マムスタンダードと定義した。

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奥 付

 

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